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神戸地方裁判所 昭和23年(ワ)330号 判決

原告 江波戸仲子

被告 株式会社朝日新聞社

一、主  文

被告は原告に対し金五〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和二十三年七月二十五日より支拂済に至るまで年五分の割合による金員を支拂はねばならない。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを一〇分し、その一を被告の負担としその余を原告の負担とする。

この判決は原告において金一五、〇〇〇円の担保を供するときは原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。

二、事  実

原告訴訟代理人は、「被告は本判決確定の日より一ケ月内に三回左記廣告を被告発行の朝日新聞に掲載しなければならない。

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昭和二十三年六月四日附朝日新聞第二面の「住友孝さん偽筆の詐欺女に執行猶予」と題する記事は眞事実と相違し恐縮に不堪、茲に判決全文を掲げて陳謝の意を表し候。

昭和○年○月○日

株式会社 朝日新聞社

右代表者社長 長谷部忠

江波戸仲子殿 (以上三号活字)

別紙判決全文<省略> (以下五号活字)

被告は原告に対し金一、〇〇〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和二十三年七月二十五日より支拂済に至るまで年五分の割合による金員を支拂はねばならない、訴訟費用は被告の負担とする」との判決、並に金員の支拂を求める部分につき仮執行の宣言を求めその請求の原因として、「原告は神戸における貿易業等の開拓者であつた大実業家を祖父に持ち現在でも相当の資産を持つ基督教の信者で同じくその信者であるところから住友孝と親しく交際していたもの、被告は全國各新聞の総発行部数の約二割に当る合計約三、三七〇、〇〇〇部(内訳東京支社分一、三五〇、〇〇〇部、大阪支社分一、四六〇、〇〇〇部、九州支社分五六〇、〇〇〇部)の日刊「朝日新聞」を発行する新聞社であるところ、被告は昭和二十三年六月四日附で発行した朝日新聞の神戸版、阪神版、大阪版等を含む日本全國各版に「住友孝さん偽筆の詐欺女に執行猶予、」と題し、「住友家当主吉左衛門氏の実姉孝さんの名を利用し筆跡をまねて昭和十五年十二月から同十九年五月までの間に孝さん名義の小切手を振出し二十二回にわたり百二十一万五千円を詐取したのをはじめ、額面千二十五万円の約束手形などを偽造していた葺合区篭池通四丁目江波戸仲子(四八)はさきに懲役二年の求刑をうけたが住友孝さんが事後に承諾したことが認められ三日神戸地裁福島裁判長から懲役八月(執行猶予二年)の判決言渡があつた」と掲載した。右掲載記事にある原告に対する刑事被告事件の発端とその結末は次の通りである。即ち、原告は住友孝が富豪の外観に似合はず家計の不如意であることより昭和十二年八月中旬同人の依頼により上村ちようより金八、〇〇〇円借入れたのをはじめとし、同十九年一月までの間、右ちよう、岡田文太郎、大崎利一郎、及び村尾敬徳らより前後数十回にわたりその都度手形又は小切手を差入れて金員を借入れ、その際小切手は孝が自ら作成し手形については原告が孝の代理人として署名その他の行爲をなし捺印は初めは孝自ら捺印し又は孝より印顆を借り受け同人の面前で原告が押捺し後には孝の承諾を得同人の印顆を借り受け自由に使用したものもあるが、いずれの場合にも孝の委任の範囲を超えることなく、又これにより入手した金銭は全部孝の使用に供したのみならず急迫の場合は原告において立替支給したこともあつたが、右元金に利息が嵩み巨額となるに從つて孝と原告との関係が円満を欠くようになつたので原告は深くこれを憂慮しその儘放置するよりその眞相を株式会社住友本社の幹部に知らせて一挙にこれを解決しようと決意しその方法として原告と取引関係にある兵庫無盡が偶々近畿無盡として住友本社の傘下に入つたのを利用し、住友本社名義の原告宛特定金銭委託証書を作成し右無盡上筒井支店に呈示しこれを担保として金一五〇、〇〇〇円の金融を申込んだところ、原告の予期に反し右金融が前記本社より承認されたため、止むを得ず右金員の支拂を受けて前記借入金の利息の支拂等に充てこれが解決につき日夜煩悶を重ねた挙句一時は自殺まで思い立つたが更に意を決して神戸上筒井警察署に自首した結果刑事手続が進行し、昭和二十三年六月三日判決言渡があり、前記村尾、大崎、上村及び岡田に対する手形及び小切手の取引は全部孝の委任によりなされたものであることが認められて無罪となり、唯特定金銭委託証書による無盡落札金の借入についてのみ有罪を言渡されたものである。しかし、これとても前記手形及び小切手による貸借関係が原因となつたものであり右借入金も全部孝のため使用し、要するに全部孝のためを思うが故の手段であり、またその被害も清算された等の理由で懲役八月二年間執行猶予の判決を受けたのである。

從つて、右判決言渡に関し手形、小切手及び特定金銭委託証書の偽造、同行使詐欺罪として起訴された原告が唯特定金銭委託証書による取引についてのみ有罪と認められ前記刑の言渡を受けたという程度の記事を掲載することは、それは社会時事の報道機関である新聞紙の正当な職分として是認せられるところであろうが、前記掲載記事の内容は、右の事実と相違し、「住友孝さん偽筆の詐欺女に執行猶予」との見出の下に、前記無罪と認定されたる事実があたかも有罪と認められ、たゞ孝が事後に承諾したため刑の執行が猶予された如き観を与え、あたかも原告が千数百万円の手形偽造の犯人で、「昭和の女天一坊」であるかのように印象づけられるのは勿論、右新聞は全國の購読者に頒布されたため原告がこれにより受けた精神上の打撃は誠に甚大である。果せるかな、隣家の人は目をそばだてて私語し、原告の愛兒も学校から帰るや爾後新聞には出されないようにと可憐なことを訴え、遠近の人々よりも問合せの手紙が頻々と來る等所謂世間に対し顔向けのできないようになつたので原告は執行猶予の部分についても控訴し全然青天白日となるよう多大の努力をはらつているものである。

しかして、本件記事は前記判決言渡及び説示を始終傍聽してその原稿を作成した被告会社の被用者である記者宮原良雄ないし編輯の事務を担当した社員である被用者が被告会社の業務執行につき、故意又は少くとも過失に基きなしたものであるから、前記不法行爲につき被告は使用者として原告に対し精神上の苦痛を慰藉し併せて名譽の回復に適当な措置を講ずべき義務のあることは勿論である。原告一家は、遠く千葉寒川の城主を祖先とする名家であり、祖父幸太郎は神戸で率先貿易業に從事する外、諸種の事業を営み神戸市内に多数の土地を有し、又諸種の公益事業を営み、祖母がその大世帶を引受け経済的にも江波戸の無盡藏と称せられ、更に父も神戸市の社交界にその名を知られ、原告は唯一の生存女子として、祖母の手より預金不動産等を相続し所謂大家の名残として相当の土地及び骨董品等の資産を受けつぎ、又嚴格な儒教の下に育てられ、後基督教の敬虔な信者となり信仰のため独身で今日に及び、日常儉素貞淑、自ら修養に励み只々聖書の趣旨を体し世のため人のためを思い江波戸の後継者たるに恥じないよう努めているものであるから、原告に対する慰藉料額は少くとも金一、〇〇〇、〇〇〇円を下らないものであり、前記のように毀損された原告の名譽を回復する方法として請求の趣旨記載の内容、方法による廣告をさせるを相当とする。そこで被告に対し慰藉料金一、〇〇〇、〇〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日にあたる昭和二十三年七月二十五日以降支拂済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支拂を求めるとともに、謝罪廣告の掲載をなすべきことを求めるため、本訴に及んだ一と述べた。<立証省略>

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する、訴訟費用は被告の負担とする、」との判決を求め、答弁として原告主張事実中、原告が昭和二十三年六月三日神戸地方裁判所でその主張通りの刑の言渡を受けたこと、被告が同月四日付朝日新聞神戸版に原告主張通りの記事を掲載したこと、原告に対する刑事事件が原告の自首に始まつたこと、および前記刑事判決に対し原告が控訴を申立てたことは認めるが、その余の事実は爭う。すなわち、

(一)  本件記事により、原告の名譽は何等毀損されていない。けだし、原告は昭和十九年六月十二日葺合警察署に出頭自首し、住友孝に無断で金融業者から多額の金員を騙取した旨申立て自ら自己の名譽を毀損する挙に出で、それがためその後未決に勾留されること一年一月の長きにわたり、又右事件については自首当時は勿論、予審終結決定当時多数の新聞に掲載されその知己友人は勿論世間にも周知の事柄となつていたものであるのみならず、原告は第一審判決でも全部青天白日の無罪となつたものでもないから、原告が主張するような高い名譽を保持していたものとは言えず、從つて本件記事の掲載によつてその名譽が毀損されたものと言うことはできない。

(二)  のみならず、被告の被用者には故意過失はない。けだし、被告会社は多年記事の正確を課題として社会より信用を得て來たものであつて、その被用者である記者、編輯者は何ら恩怨のない原告の名譽を毀損しようというような目的ないし希望は勿論、そのような認識をもつて報告するはずのないことは勿論、「ジヤーナリストにとつて、二十四時間以前のことは古代史に属する」と言はれるように、日刊新聞の報道は先づ第一に迅速が要求されるのであつて、被告新聞紙神戸版の司法記事についても、神戸支局の司法記者が神戸の裁判所で取材した原稿は直に電話等で右支局に送られ支局長の選択を経て掲載の價値を認められたものは、更に定時電話で大阪本社通信部を経て神戸版係り編輯次長の手許に送られ、同次長により僅に三〇分ないし一時間の間に数倍の原稿中より掲載記事を選び表題を附して午後五時の神戸版締切時刻までに必ず編輯し終らねばならない。故に新聞記事は如何なる点からみても絶対に誤りのないという程その記事について調査する事は殆ど不可能であり、日刊新聞の製作者に対して要求される「正確」についての注意義務の限度は、同時に社会が要求する「迅速」なる絶対條件の下において理解されねばならず、更に新聞用紙の不足より二面新聞を発行する現在の日刊新聞は簡潔の上にも圧縮し字数を減ずるため修飾詞、接読詞等を省く要がある。本件記事でも表題については「偽筆の廉で起訴された」本文については「偽造していたという嫌疑で起訴された」と書き加えれば正確性は増すことが明かであるが、紙面の制限がこれを許さない現状では、多数の出來事を報道すべき日刊新聞の使命から右の程度の省略は認容されねばならないものであり、新聞記事が細部まで絶対的正確を期することは殆んど不可能である。以上の如く、報道の迅速と記事の簡潔を至上命令とする新聞記事において、被告の記者及び編輯関係人は本件記事につき、できる限りの注意を拂つて正確を期したもので、何ら注意義務の懈怠はない。

(三)  仮に被告において損害賠償の義務があるとしても、本件記事は発行部数五〇、〇〇〇部を有する神戸版に掲載されたにすぎず、しかもその掲載方法としては、最も報道價値に乏しい記事としてその第二面第十二段目に通常新聞活字五号で一段約十五行にわたり記載され、見出もゴヂツク活字五号で二行に割り「カブセ」と称し見出の下部に記事を記載したものでいずれも特に読者の注意を喚起するのに十分でなく往々看過される程度のものであり、また原告の系図、祖父母の人物、事跡、地位資産等が原告主張の通りであるとするも、現今のように変革の激しい離合集散のたゞならぬ大都会では原告自身のものでない右のような事実は世間の問題とならぬところであり原告自身は亡父種松、亡母家彌の長女で兄弟は既に没しその教育は高等小学校を終えて後若干家庭教育を受けたに過ぎず独身を続けその間他に就職したこと自ら営業を営んだことなく、家産により生活を続けて來たもので世間との交際も乏しく公職についたこともなく偶々信仰を同じくするところから住友孝と知己になつたに過ぎない上、前記刑事事件の進行に伴つて相当その名譽を失つている等の理由より原告請求の慰藉料額は過大に失する。又謝罪廣告については昭和二十四年十二月二十七日右刑事事件の控訴判決が大阪高等裁判所で言渡された際、被告は同二十五年一月二十六日附被告新聞の神戸版及び阪神版に本件に関する正確な記事を掲載したので既に原告の名譽はこれにより回復保持されるに至つたものである。又原告主張の内容及び形式による謝罪文及び判決全文の掲載は莫大な紙面を必要とするものであつて社会の公器である新聞紙面を費してこのような廣告文を掲載することは認容さるべきでない、」と述べた。<立証省略>

三、理  由

原告が昭和二十三年六月三日神戸地方裁判所でその主張のような刑の言渡を受けたこと、及び判決言渡に関し、原告主張の記事が同月四日附被告の発行する朝日新聞神戸版に掲載されたことは当事者間に爭のないところであり、成立に爭のない甲第四号証によれば、昭和二十三年六月四日附朝日新聞阪神版に「住友孝さん名義の小切手詐欺女に判決」と題して「住友吉左衛門氏の実姉孝さんの名を利用しその筆跡をまねて昭和十五年十二月から十九年五月までの間に孝さん名義の小切手を振出し二十二回にわたり百二十一万五千円を詐取したのを始め、額面千二十五万円の約束手形を偽造した神戸市葺合区篭池通四丁目江波戸仲子(四八)はさきに懲役一年の求刑をうけたが、三日神戸地裁で懲役八月(執行猶予二年)の判決を言渡された」旨の記事が掲載されたことを認め得るにとどまり、原告主張の記事が、他の朝日新聞の全國各版に掲載されたことはこれを認めるに足る何等の資料もない。

しかしながら、成立に爭のない甲第一号証(刑事判決)によれば原告はその起訴事実の大部分である小切手手形の偽造の点については無罪となり極めて一部分にすぎない金銭委託証書に関する点についてのみ有罪と断定されたものであることを認めるに十分であつてこの事実と前記記事を比較すると、右記事は裁判所により無罪と認定された事実をあたかも有罪と認定された如く報道したものであること、換言すれば原告が孝名義の手形、小切手等を偽造し数十回にわたつて一〇、〇〇〇、〇〇〇円を超ゆる巨額の金員を詐取したという事実が裁判所により認定された如き観を與えることは一点の疑の余地のないところである。かくの如きは、起訴事実から見れば極めて有利な判決の言渡を受けた原告としては堪え難いところであることは推察に難くないから、原告は右記事によりその名譽を毀損されたものと解するを相当とする。もつとも、原告に対する刑事手続は原告の自首にはじまつたことは当事者間に爭がなく、成立に爭のない乙第一号証の一、二、証人林田重五郎、宮原良雄の各証言および原告本人尋問の結果によれば、原告が右事件のため未決勾留を受けること一年一月以上に及び、且つ右事件は予審終結決定の際に既に多数の新聞に報道されていたことが明かであり、更に事件全部が無罪となつたものではなく、その一部は有罪と認定されて刑の言渡を受けたものであることは前認定の通りであるから、当時原告はその名譽を毀損されていたとはいえ、もはや侵害さるべき名譽を全く有しないものとは到底解し得ない。けだし、自首そのものによりその申告事実が直ちに公権的に確定されるものでないのは勿論、原告が嫌疑を受けていることが既に相当周知となつていても、また一部が有罪の認定を受けていても、他の点につき事実に反して裁判所により有罪と認定された旨を報道されるならば、益々その名譽は毀損される結果となるからである。

しかして、被告の被用者である記者高原良雄は判決言渡後退廷した係裁判長から廊下において判決の結果を立聞し無罪となつた事実があることを聽きながら漫然その点を確めないで右記事の原稿を作成し、次いで同じく被用者である編輯次長は被告の大阪本社で右原稿に基き記事に見出を附してこれを前記神戸版に掲載したものであることは前掲証人宮原及び林田の各証言によつて認められるから、右記事の掲載に関し、被告の被用者において少くとも過失があつたものと推断するのが相当である。もつとも、被告は報道の迅速と記事の簡潔を至上命令とする日刊新聞においては前記のような過誤は止むを得ざる旨主張し、迅速と簡潔が日刊新聞として記事の價値を高め、紙面の制約に対処する重要な要請であること勿論であるが、それは新聞の生命ともいうべき「眞実」なる絶対的條件に讓歩さるべきものであるのみならず、本件においては些少の注意を惜しまなければ眞実を追究するのに必ずしも迅速と簡潔の要請を犠牲にしなければこれをなし得なかつたとは認められないから、この点に関する被告の所論は採用できない。しからば、被告は使用者としてその被用者において原告に対しその名譽を毀損して加えた損害を賠償すべき責任のあるや当然である。

そこで、損害賠償の方法、程度について考えるに、成立に爭のない甲第一号証、第五号証、第六号証及び原告本人尋問の結果を綜合すると、原告は相当の家柄を持つ旧家に生れ、亡祖父は神戸での貿易業の開拓者として相当の実業家であり、亡祖母も又公共事業に相当の盡力をし現在原告は養女一人を抱え若干の資産を有し独身ではあるが相当の生活を営み世評も惡くなかつたこと、及び刑事事件においては、原告は同信(基督教)の誼みで知合となつた住友孝の依頼により同人の家計の困難を切拔けるためその依頼によつて同人の印顆を用いて手形、小切手を振出し、相当の金員を借入れてやつたが、その金額が莫大となるにつれてその処置に窮し遂に住友会社名義の特定金銭委託証書を偽造して金融を受けた事実が認定されて特定金銭委託証書偽造の点について懲役八月執行猶予を言渡されたことを認めることができる。しかして、原告が前記手形、小切手等の作成をも自己一人の犯行として当局に自首していることは前記の通りであり、成立に爭のない甲第二号証、同第四号証、乙第一号証の一、二、同第四号証の一、二、並に前掲証人林田の証言によれば、右刑事事件の進行中、既に大阪毎日新聞等にも右事件に関する報道がなされていたこと、また本件記事は当時発行部数五七、〇〇〇の朝日新聞神戸版二面十二段目に五号活字で十五行にわたつて掲載され、本件記事と同趣旨の記事が発行部数約七〇、〇〇〇の阪神版二面十一段目から最下段にかけて同じく五号活字で十一行にわたつて掲載されたものであること、及び刑事事件の控訴判決に対する原告の上告に際し、これに対する正確な記事が被告新聞神戸版、阪神版に掲載されたことが認められる。以上認定の諸事実を綜合斟酌すれば、原告が本件記事の掲載頒布されたことによる慰藉料は金五〇、〇〇〇円を以つて相当と考える。ただ、謝罪廣告掲載の請求についてはその廣告をまつまでもなく、被告のなした前記眞実の報道により原告の名譽は回復保持されたものと認められるから、更に莫大な空白を費してまで廣告文を掲載するの必要が認められない。

よつて、原告の請求は、右五〇、〇〇〇円、及びこれに対する訴状送達の翌日にあたること明かである昭和二十三年七月二十五日以降支拂済迄民法所定年五分の割合による遅延損害金の支拂を求める限度においてこれを認容すべきであるが、その余の請求は理由なしとして棄却すべく、なお、民事訴訟法第八十九條第九十二條により訴訟費用を各当事者に分担させ、金員支拂の部分については、同法第一九六條第一項の規定を適用し、担保の提供を條件とする仮執行の宣言を附することとし、主文の通り判決する。

(裁判官 古川静夫 中島誠二 保律寛)

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